「表現の不自由展・その後」を応援してください

                          2019年8月3日

8月1日、あいちトリエンナーレ2019はスタートしました。この国際芸術祭のテーマは「情」です。人類が直面する問題の原因は、不安な感情やそれをあおる情報であり、それを打ち破ることも「情」であり、アートであるとうたっています。そんななか、「表現の不自由展・その後」は、近年、表現の場を奪われた作品を集め、なぜそのようなことが起きたのかをいっしょに考える展示として、大きな注目を集めています。

なかでも、「平和の少女像」は、日本と韓国の政治の問題として語られることが多い「慰安婦」にまつわるテーマを、芸術の観点から体感できる機会として、共感をもって受け止められています。「平和の少女像」の横の椅子に座って少女に話しかけたり、いっしょに写真を撮る風景にたくさん出会います。作家にとっても、わたしたち展示を準備してきた人間にとっても、豊かで充実した時空間が形成できたことを喜んでおります。

 にもかかわらず、8月2日、名古屋市の河村たかし市長は、会場を視察した後、「平和の少女像」を展示すべきではないという抗議文を、芸術祭実行委員会会長の大村秀章愛知県知事に出しました。同日、菅義偉官房長官は、記者会見で、国からの補助金交付を精査すると発言しました。

 一方、愛知トリエンナーレ事務局には、展示の中止や公的資金を使った展示の理由を求める電話が連日殺到し、現場は疲弊し、本来の業務がほとんどできない状況に追い込まれています。異常な事態であることは間違いありません。

 この企画は、4年前の2015年、東京練馬区のギャラリーで開催された「表現の不自由展」を訪れたジャーナリストの津田大介さんが、強い印象を受け、あいちトリエンナーレの芸術監督として「表現の不自由展・その後」をぜひ開催したいと要望されたことから始まっています。わたしどもも、津田監督の熱意に動かされて、ここまで努力をしてまいりました。

今回の事態を受けて、津田監督は、「感情を揺さぶるのが芸術なのに、『誰かの感情を害する』という理由で、自由な表現が制限されるケースが増えている。政治的な主張をする企画展ではない。実物を見て、それぞれが判断する場を提供したい」と語っています。

きょうは開催から3日目です。事態は予断を許しません。

わたしたち実行委員会は、今回の展示に参加してくださった16組の作家のみなさん、趣旨に理解を示してくださるたくさんの観客のみなさんに対する責任を痛感しております。


 もし仮に、展示が政治家や攻撃によって中止されるようになれば、
人々の目の前から消された美術表現を集めて現代日本の表現の不自由の状況を考えようとする企画を、わたしたち自身が破壊することになりかねません。そのようなことが起きれば、
戦後の日本で最大の検閲事件になってしまいます。そうしたことは絶対に防がなければなりません。

わたしたちは、本展を会期末までやり遂げることを強く希望しています。

どうかみなさまにおかれましては、不当な弾圧に屈することがないよう、幅広く応援の輪を広げ、連帯していただきたく、よろしくお願い申し上げます。

以 上

「表現の不自由展・その後」実行委員会

アライ=ヒロユキ、岩崎貞明、岡本有佳、小倉利丸、永田浩三