開催のごあいさつ

下記の文章は、「表現の不自由展・その後」の展示場の入口に掲載されているものです。

私たち実行委員会はこの事態を憂い、美術とその関連領域に絞って、2015年に東京のギャラリー古藤で「自由を脅かされた表現」を集めた「表現の不自由展」を開きました。

いま、日本社会で「あること」が進んでいます。自由に表現や言論を発信できなくなっているのです。その領域はさまざまです。新聞や雑誌などの各メディア、美術館や画廊、各種公共施設、日常生活、路上の活動など。その内容もさまざまです。報道や娯楽番組、天皇と戦争、植民地支配、日本軍「慰安婦」、靖国神社、国家批判、憲法9条、原発、性表現、残酷表現など。その不自由のあり方もさまざまです。検閲、規制、忖度、弾圧、クレーム、NGなど。

あれから5年が経ちましたが、この「不自由」はさらに強く、広範囲に侵蝕しています。ここで私たちは改めて「自由を脅かされた表現」を集める「表現の不自由展・その後」を開きます。今回はほぼ美術表現に絞っての選定です。

自由をめぐっては立場の異なるさまざまな意見があります。すべての言論と表現に自由を。あるいは、あるものの権限を侵害する自由は認めるべきではない。

本展では、この問題に特定の立場からの回答は用意しません。自由をめぐる議論の契機を作りたいのです。 そして憂慮すべきなのは、自由を脅かされ、奪われた表現の尊厳です。本展では、まずその美術作品をよりよく見ていただくことに留意しました。そこにこそ、自由を論じる前提があることと信じます。

そして、展示作品の背後にはより多くの同類がいることに思いを馳せていただけないでしょうか。

本展では年表パネル、資料コーナーも充実させました。作品をご覧になった後は、資料をじっくりと見ていただき、いまの日本の「不自由」について考えていただければ幸いです。

2019年8月

表現の不自由展 実行委員会

アライ=ヒロユキ、岩崎貞明、岡本有佳、小倉利丸、永田浩三