2019年9月26日
表現の自由回復のために その3
「条件付き再開」は検閲であり、無条件回復こそ自由の証明である
「表現の不自由展・その後」が3日間で展示を中断させられ、2か月を迎えようとしています。
9月25日、「再開」の言葉が大村秀章知事から語られました。これはこの2か月弱で初めて公的に発せられた明るい言葉です。このこと自体は歓迎したいと思います。
しかし、この再開とはどのようなものでしょうか。「第3回あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」を傍聴したとき、実はこれが「条件付き再開」に過ぎないことに気づかされます。
そもそも、展示を強制的に中断させられた理由は何でしょうか?それは安全・安心面での「重大な危機」です。しかし、本会では展示施設の多くの方を心労で苦しめた抗議・妨害や犯行教唆に対する予防、対処はほとんど話されませんでした。代わって多くの時間を割いて話されたのが「表現の不自由展・その後」のキュレーションの低評価採点です。
展示内容をことさらあげつらうのは、セキュリティがかれらにとってことの本質でない証拠と言えます。むしろ、「表現の不自由展・その後」への検閲こそが検証委員会の本心ではないでしょうか。
検証委員会は中間報告となる検証報告をまとめていますが、表現の不自由展実行委員会が指摘した事実を修正追加しようとしません。契約関係はまずトリエンナーレの出品作家であり、具体的な企画・キュレーションなどの業務委託を定めた契約書もあること。5月30日でこちらが重要な提言を行った警備会議のこと、など多々あります。
検証委員会は再開を標榜していますが、表現の不自由展実行委員会を排除した形も視野に入れて進めようとしています。それは9月25日の記者会見での質疑応答から明らかになっています。
検証委員会は公平性をうたい文句に、表現の不自由展実行委員会が展示説明文に記載した史実をねじまげようとしています。日本軍「性奴隷」の史実を不確かなものと形容し、展示空間にこれを反映しようとしています。これは社会的公正と少数者の人権をないがしろにする反動的姿勢にほかなりません。
検証委員会は恣意的かつ非科学的なアンケート手法を用い、「表現の不自由展・その後」への社会的反感なるものをでっちあげています。会場アンケートの回答は有為抽出であり、社会意識を正確に反映するサンプルとなりえません。また自由記述を数量化して社会意識の証左として用いるのは意識調査の禁じ手です。
私たち表現の不自由展実行委員会は、ゆがんだ検証報告の差し戻し修正を改めて強く求めます。
私たち表現の不自由展実行委員会は、私たちを参加作家として正当に遇しない検証委員会の姿勢を厳しく批判します。
条件付き再開となった場合、「表現の不自由展・その後」の作家の幾人かは展示ボイコットをすると表明しています。国際芸術展としての体面を保とうと躍起になっている検証委員会の求めるかたちの再開は、砂上の楼閣なのです。
再開とは言うまでもなく、現状復帰を文法的に意味します。私たち表現の不自由展実行委員会は無条件の再開を強く求めます。そのための協議には喜んで応じる姿勢です。
「表現の不自由展・その後」の無条件展示再開は、検閲が横行するこの日本社会で、いまもなお表現の自由が息づいていることを証明する行為です。それを私たちは希望と捉えています。
表現の不自由展実行委員会
アライ=ヒロユキ、岩崎貞明、岡本有佳、小倉利丸、永田浩三